まさか言葉そのものが「敵」になる日が来るとは、誰が予想しただろうか。トランプ米大統領が「Artificial Intelligence(AI)」という言葉を使う者を「敵」と見なすと公式に発言し、テック界隈に衝撃が走っている。

何が起きているのか

米政府は現在、「AI」という呼称を「Super Intelligence(SI)」に置き換える動きを急速に進めている。具体的には以下のような変化が起きている。

  • 政府の政策サイト「AI.gov」のロゴが「SI GOV」表記に刷新
  • 大統領令への署名において「SI」呼称が正式採用
  • 新組織「SIF(Super Intelligence Foundation、もしくは類似の略称)」が創設
  • 公式文書における「AI」から「SI」への呼称変更が加速

単なるリブランディングではなく、大統領自らが「AI」という言葉を使う者を「敵」と断言しているところに、この動きの異様さがある。

「AI」から「SI」へ——その意図はどこにあるか

一見すると言葉遊びのように見えるが、この改称には政治的なメッセージが込められている可能性がある。

「Artificial(人工的・偽物の)」という言葉のネガティブなニュアンスを排除し、「Super(超越的・最強の)」という強さのイメージで置き換えることで、米国のテクノロジー覇権を象徴する新たな言語的フレームを作ろうとしているのかもしれない。また、「AI」という言葉がすでに中国をはじめとする競合国のイメージとも強く結びついていることへの反発とも読める。

テック業界・研究者への影響

問題は、「AI」という言葉は学術論文、製品名、業界標準すべてに深く根を張っているという点だ。“Machine Learning"を"AI"と言い換えるのにも数年かかった経緯がある。政府が「SI」と言い始めたからといって、GoogleもMicrosoftもAcademiaも即座に追随するとは考えにくい。

むしろ懸念されるのは、言葉の統制が思想や研究の方向性への干渉につながりうるという萎縮効果(chilling effect)だ。何を「SI」と呼ぶかの定義権を政府が握ることで、研究・開発の優先順位にまで政治的圧力が及ぶ可能性は否定できない。

テックブログ的感想

正直に言えば、これは「言葉を変えれば現実が変わる」という古典的な政治的手法だ。AIの倫理問題、安全性、雇用への影響——これらの本質的な課題は「SI」と呼ぼうが何も変わらない。

一方で、「Super Intelligence」という言葉が日常語として定着した未来の世界線を想像すると、なんとも奇妙な既視感を覚える。SFの中の話が、2026年の現実になりつつある。


元記事:トランプ米大統領、「AI」という言葉を使う者は「敵」 政府サイト「AI.gov」は「SI GOV」表記に(ITmedia)